映画オデュッセイアの解説とトリビア完全版

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世界中で大ヒットを記録した映画オデュッセイアには多くのトリビアが隠されています。特にクリストファー・ノーラン監督による、細部にこだわった撮影方法については驚くこと間違いなし。そこでこの記事では一挙トリビアをまとめてみました。

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トラヴィス・スコット

物語の冒頭で登場する吟遊詩人役として出演しているのが、ラッパーのトラヴィス・スコット。ちなみにトラヴィス・スコットが大手映画に出演するのはこれが初めて。これまで自身のミュージックビデオやちょい役でカメオ出演したことはありましたが、俳優として初めて本格出演したのが本作となったのです。

ちなみにクリストファー・ノーラン監督は、これまでにも『プレステージ』でデヴィッド・ボウイ、『ダンケルク』のハリー・スタイルズといった歌手を起用しており、今回もミュージシャンを抜擢する経緯となったのです。

IMAX

本作は、史上初めて全編がIMAXフィルムで撮影された映画として話題を集めました。約90~95%以上の映画やドラマはデジタル撮影といわれる昨今において、クリストファー・ノーラン監督はあえてフィルムカメラの中でも、最も扱いが難しく大変なIMAXフィルムで撮影することにこだわりました。IMAXフィルムはフィルム消費量が桁違いで、カメラの重さは約40~50kgで撮影が非常にしずらく、また、駆動音がうるさいといったようになにかとデメリットが多い撮影方法です。

まず、この駆動音を解決するためにクリストファー・ノーラン監督は、カメラ全体を防音ケースで覆うサイレンサーを作り、以前は難しかった会話シーンでの同時録音を可能にしました。この改良があったからこそ、ノーランは『オデュッセイア』を全編IMAXフィルムで撮影するという、以前なら現実的ではなかった挑戦を実現できたのです。

さらにカメラが大きすぎて俳優同士の視線が合わない問題を解決するために鏡を使ったシステムでアイラインを維持するなど、さまざまなアイデアが使われています。

数あるデメリットに対しIMAXフィルムは解像度、色の情報量においてほかのフィルムとは比べ物にならないぐらい優れていて、圧倒的な画質、巨大スクリーンでの没入感、フィルムならではの質感、CGに頼らないリアリティが出せるのです。どれだけコスト、手間をかけてもクリストファー・ノーラン監督は、迫力とリアリティを優先したのです。

セット

クリストファー・ノーラン監督は、CGはできるだけ使わず、可能な限り実物で撮ろうというのをポリシーにしており、セットにもそのこだわりが見えます。例えばトロイア戦争の部隊となったトロイアのセットはモロッコのアイト・ベン・ハドゥに建設され、2.5エーカー以上の広さに60以上の構造物を作り、2,000人のエキストラを収容できる規模となりました。

ちなみに劇中で使われた船は、全長35メートルの世界最大のバイキング船「ドラケン・ハラルド・ホールファグレ」のレプリカを使用。オールを動かす演技だけをスタジオで行うのではなく、実際に海上で漕いでいる場面を撮影した結果、船の揺れや水しぶき、俳優の体の動きが自然になり、IMAXの大画面でもリアリティのある映像を可能にしました。

トロイの木馬

本作で最もインパクトを与えた要素であるトロイの木馬は、高さ約10.7m、重量約3.6トン、木材・鋼材・FRP(ガラス繊維強化プラスチック)を用いて建造。さらにこの木馬を実際に砂浜の上で約250人のエキストラが引いて運びました。波で一部が壊れるほど過酷な環境で撮影が行われたものの、実際に引きずって動かした映像は圧巻です。

サイクロプス

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海の神ポセイドンの息子であり、一つ目の巨人、サイクロプスは洞窟に住み、羊を飼いながら、迷い込んだ人間を食べるなど、残虐な性質を持つ巨人として描かれています。その顔は歪んだ人間のように見え、目は垂直に開閉する歪な楕円形をしているのが特徴で、 伝統的な「額に一つの丸い目」というデザインになっていないのがポイントです。

このモンスターを描くために、クリストファー・ノーラン監督は、高さ60フィート(約18.3m)の巨大パペットを作り、頭部や腕、上半身を物理的に動かせるようになっており、俳優たちは実際にその巨大な造形物を相手に演技しました。その上で、目や表情、スケール感の調整などをCGで補完したのです。ノーランは「できるだけ俳優が実物を見て演技できる環境」を好むため、フルCGではなく、巨大な実物のパペットを作るという手法を選んだのです。

ラストリュゴネス族

登場する「鎧を着た巨人」は、原作神話におけるラストリュゴネス族を再構築したキャラクターで本作に登場するモンスターの中で、最も大胆な改変が加えられた存在ともいえます。

原作では「岩を投げる人喰いの巨人」として描かれていますが、映画では銀色や鋼鉄の重厚なプレートアーマーを身にまとった巨大な戦士として描かれています。彼らは木をなぎ倒すほどの大剣を振るい、一振りで人間を吹き飛ばす圧倒的な力を見せます。

この巨人の巨大さを表現するために、ノーラン監督はCGに頼らず、「強制遠近法」という古典的な撮影技法を採用。前景に巨人を演じる大柄な俳優を配置し、後景にオデュッセウス役のマット・デイモンらを配置して同時に撮影することで、スクリーンの上で自然なサイズ差を生み出しています。

また、あるシーンではマット・デイモンのダブルとして小柄な女性を起用し、大柄なエキストラとの身長差を出すコントラストを表現しています。

シノン

本作で登場する シノンはホメロスの原作『オデュッセウス』には登場しませんが、ノーランは彼を「オデュッセウスの策略の犠牲になった農家の少年」として再定義しました。

シノンは本来徴兵されるはずだったアンティノウス(後の求婚者のリーダー)の徴兵くじを、家族を養う金銭と引き換えに代わって引き受けて戦争に参加。しかし、アンティノウスはその約束を果たすことはなく、戦争においても木馬の計略において、シノンは木馬のそばに一人残され、トロイア軍を欺く役割を命じられ命を落としてしまいます。つまりシノンはいわば戦争や裏切りの被害者を象徴する存在だったのです。

ちなみに乞食を装って帰還したオデュッセウスがイタカで名乗る偽名も、この「シノン」です。シノンはオデュッセウスの「冷酷な知性」によって犠牲になった最大の象徴で、その名を名乗ることは、トロイアを滅ぼした計略への後悔と自己批判を含んでおり、彼が「英雄」としてではなく「罪人」として帰還したことを示しているのです。

ヘレネ

ルピタ・ニョンゴがヘレネを演じることについて、一部で「ギリシャ人ではない」との議論が勃発。特にXやテスラのCEOとして知られるイーロンマスクが批判したことで大問題となりました。特に多かったのは、「ヘレネはギリシャ神話で世界一の美女なのだから、黒人女優が演じるのはおかしい」という人種的な批判です。

これに対し、ルピタ・ニョンゴ自身は、、「歴史を厳密に再現する作品ではなく、神話を現代的に解釈した作品なのだから、キャスティングにも創作の自由がある」という考えを表明。「クリストファー・ノーランがこの物語で目指したこと、そのバージョンを私は全面的に支持しています。」と語っています。

一方、ノーランは「私たちのキャストは世界を代表しています。批判に対する弁明を考えることに時間は使いません。私が反応してもしなくても、批判は存在し続けるでしょう。」と反論hし、彼女を、卵から生まれたという神話的背景を持つ「神の落とし子」として、人種を超越した象徴的な存在として描いたと話しています。

カリュプソ

オデュッセイアには、恐ろしいキャラが多く登場するのに対し、美しい女神たちもストーリーの重要な役割を担います。その一人がシャーリーズ・セロン扮する海の女神カリュプソ。彼女はオデュッセウスに危害を与える存在ではありません。

しかしながら安らぎ、安全、愛を与えたカリュプソが、実は一番オデュッセウスを故郷から遠ざける存在だったのです。カリュプソはロートスの実をオデュッセウスに食べさせ記憶喪失にしてしまいます。そうして実に7年もの間、オデュッセウスの時間を奪ったともいえるのです。

これは常に怪物のような存在が人生の障害になるわけでなく、時には愛と安らぎを与えてくれる存在こそが障害となりうる、という教訓にもなっています。

ラスト

原作では、物語の終盤ペネロペが「二人のベッド(生きているオリーブの木を彫って作ったもの)を移動させて」と要求をつきつけ、それが不可能であることを知っているオデュッセウスの反応を見て本物だと確信します。一方で映画ではこの物理的なテストが、内面的な「罪の告白」へと置き換えられています。

ちなみに強靭な弓に弦を張り、12個の斧の穴を通り抜けるように矢を射る弓矢の試練は原作に忠実な要素であり、物語のクライマックスにおける重要な象徴として扱われています。